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このブログのメールコメントに、2012.06.04 "別れたい夫"高嶋政伸 vs. "別れたくない妻"美元~泥沼離婚裁判(とりわけ本人尋問)に際して一家言・・・どんな離婚裁判も「泥の投げあい」です!で出てきた用語の「民事裁判での『書面応酬』って何ですか?」という質問が来ました。


実際の民事裁判は2つのステップでなされます。第1のステップとして、最初のほうの期日では(「公判」と呼ぶのは刑事裁判で民事裁判では期日と呼びます)、原被告が、各々、真実と確信している"事実"を「主張」としてぶつけ合います。この主張は、訴状、答弁書、準備書面などの裁判書類に記載して期日に先立って裁判所と相手方代理人にファクシミリで直送します。このような書面のやり取りを「書面応酬」と言います。ですから、ドラマ「リーガル・ハイ」(←番組公式サイトにジャンプできます)に代表されるような法廷ドラマにあるように、当事者の「主張」を代理人弁護士が法廷で弁舌も鮮やかに述べるようなことはまずもってありません。実際の主張のやり方は以下のとおりです。
               
 裁判長(事前に提出した裁判書類を手にしながら)
  「この書面のとおりに『陳述』なさいますか?」
 代理人弁護士(一応、起立して)
  「はい、陳述します」

これだけです。この『陳述』というのがマジックワードで、裁判書類に記載の事実を法廷で読み上げる替わりにすると言う意味で、民事訴訟の原則でもある「口頭主義」をごまかしているのです。でも、これでは傍聴人にとっては何を主張しているのか全くわからないでしょう。

第1回期日は公開の法廷でなされる弁論ですが、第2回から第3回期日のあたりから、「弁論準備手続」に移行することがあります。弁論準備手続では、公開の法廷ではなく裁判体の各部の準備室で、傍聴人なしの非公開でおこなわれ、裁判官も法服(黒い雨ガッパみたいな服)も着ず、両代理人弁護士をはさんで、よりひざを割って話し合い、書面応酬をしつつも、場合によっては裁判上の和解の可能性を探ったりもします。昔から「弁論兼和解」という俗称で実務上行われていたのですが、法律上の根拠が薄弱であるという理由で、昨今の民事訴訟法改正では明文化され正式な手続となりました。

書面応酬の最中には、書証(書面による証拠のことで契約書などです)の提出も行われます。裁判所と相手方弁護士に提出する書証はコピーなので、一度、弁論で実物の原本(オリジナル)を裁判官と相手方弁護士に閲覧させる機会が与えられます。

弁論準備手続でも和解に至らなかった場合は再び弁論に手続を戻して、第2のステップとして、我々法曹界の人間が人証(にんしょう)と呼ぶ証人尋問手続に入ります。原被告本人の尋問がなされるのは当然として、第三者的証人が認められるのは、裁判の迅速化というお題目のため、各当事者ごとに1名ないし2名程度です。事件の規模によってはもう少し多くの証人を認めてほしい気がしますが・・・。

一方の代理人弁護士が同行して来た証人には、15分から30分程度の主尋問がなされます。そして、相手方代理人弁護士がその証人に対して、やはり15分から30分程度の反対尋問が行われますが、やはり反対尋問には60分くらいほしいものです。ここにも「裁判の迅速化」の波が押し寄せているのです。自分の側の証人が反対尋問でピンチに陥っているときは、必ずしも法令に違反しない尋問でも、「異議あり!」(多くの方が弁護士と言えばこのセリフと思っているのでしょう(笑))と言って、助け舟を出すのも法廷テクニックのひとつです。 ちなみに反対尋問において華麗な尋問技術で相手の主張を根本から切り崩すというのも、やはりドラマでの出来事です(笑)。実際には、証人の発言の矛盾を引き出して証人が黙り込むようにして当方の裁判所の心証を良くしたり、敵対的な証人の場合には、あえて挑発して、抜き差しならぬ発言を引き出すのが、実務的なテクニックです。

この後、各当事者は最終準備書面を提出・陳述することがありますが、基本的に弁論は終結して審理は終了します。

さて、判決の言い渡しですが、刑事事件では被告人も弁護人も法廷に出頭する義務があるのですが、民事事件では、原被告も代理人弁護士も裁判所に出廷する義務はありません。よほど社会的な影響のある大事件でもない限り代理人弁護士は出頭せず、判決言い渡し時刻から少々経ったころあいを狙って裁判所に電話して主文のみを聞いて判決文は自分の法律事務所への郵送を待つだけです。また、裁判官もよほど社会的な影響のある大事件でもない限り法廷で判決理由は朗読せずに「主文」を流れ作業的に次々と朗読するだけです。下手をすると傍聴人が誰もいない書記官以外空室の法廷で朗読を続けることもあります。「主文」とは、「被告は原告に対して100万円を支払え。この判決は仮に執行することができる。訴訟費用は被告の負担とする」(原告の勝訴)、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」(原告の完全敗訴)といった、裁判書冒頭の結論部分のことです。


最初は、「書面応酬」の解説のみのつもりが、民事訴訟の全体的な流れの解説になってしましました。何かの参考になれば幸いです。



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